読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

映画「ルーム」を見た!!

見たの結構前で、昨日クローバーフィールドレーンの感想書きながら、あ、こっちの感想書いてねえやって気付きました。

gaga.ne.jp

見に行った時は平日昼間でしたが、席は半分ほど埋まり、ほぼ全員が女性。

私も泣きましたが、他の人の嗚咽も聞こえてきて、なので安心して映画を見ることが出来ました。

我が身に引き寄せて見てしまう女性、多かったのではないでしょうか。

 

アカデミー賞も受賞して話題にもなったのでおおまかなあらすじは知っている方も多いでしょう。

7年前高校生の頃に男に誘拐され、納屋に監禁され性的暴行を受け続けた主人公ママ(ジョイ)はみごもった末に出産、以後その子どもと共に生活してきたが、犯人の男が失業して生活費にも事欠くようになったことを知り、脱出の計画を練り、実行し、ついには自由を得るが、すんなりと外の世界や人に馴染むジャックと違い、外での生活にママはなかなか適応できない。

心の傷をどうやって乗り越えていくのかを抑制のきいた演出で静かに追っていく物語でした。

(ネタバレあるよ)

 

 

 

 

序盤から中盤にかけては、ジョイを誘拐してレイプし、妊娠させた男(オールドニックと呼ばれている)との週に一度の共同生活とレイプが描かれています。

扇情的に過激に描写されてはいませんがカチャカチャと音をさせベルトを外し、下着姿になるのがクローゼットに押し込められたジャック視点から部分的に見えるだけでもおぞましくてぞっとします。

もしかしたらあの描写でもフラッシュバックが起きる人がいるかもしれません。

マッドマックスFRでもそうでしたが、ともすればセクシャルに消費できるようなレイプをあからさまに描かなくても、性暴力の恐ろしさおぞましさは十分に表現できる。

むしろ安易なレイプ描写を選んでしまうのはクリエイティビティーの欠如でしか無いことがわかりますね!

 

見ていて恐ろしかったのは犯人とジョイとジャックの生活が、まるで仕事が忙しく支配的で独善的な男性とその妻であり専業主婦である女性とその子どもの通常の結婚生活に見えなくもなかった点。

だからこそ誘拐犯でありレイプ犯である犯人が無理やりさらって無理やり性行為を敷いているジョイを、自ら望んでその生活を選びとったかのように錯覚し「お前は俺に感謝すべき」「こうやって生活させてやってる」と一人で家計を担っている夫のようなことを平気で言う。

ジョイも彼を怒らせてはいけないことを重々承知しているから、無表情に同意して「感謝しているありがとう」と述べる。

これも昨日感想を書いた「10クローバーフィールドレーン」と同じく、男に生殺与奪権を握られ、自分の自由と尊厳を差し出し服従することに寄って生かされ、とりあえずの衣食住を得ている女性とその子ども。

 

 生まれてきて監禁生活を一変させてくれた自分の子どもジャックに、ジョイは脱出の希望を託し、ジャックはその期待に答えて勇敢に外に出て助けを求める。

幸いにもすぐに警察が駆けつけてくれてジャックを保護するんですが(胸が張り裂けるようなドキドキがここでようやく一段落)髪の長いジャックを見て冗談ともうんざりしたとも取れる口調で「カルト教団の子かな」とやる気なく意見する男性警官と違って、黒人の女性警官はひと目でジャックの様子に違和感を覚えて、ジャックに過剰な負担が掛からないよう短く適切な質問で彼が逃げ出してきた納屋を特定するために無線で警察に指示を出す。

私はこの場面を見てだーっっと涙が出てきましたよ。

男性警察官の鈍感さ、そして女性警察官の聡明さ!!!

普段から向き合ってる危険が段違いだからこそわかること!!!

 

私が泣いたのは監禁される日々において、子どもがどれだけ救いになったか。

物資を持ってくる犯人の週一の訪れ以外、代わり映えのしない密室で日々成長していく子どもの世話をするのがどれだけの慰めになったか。

長い人類の歴史の中、望まない結婚をした女性は自分の子どもにすがりつくしかなかったんだろうなと思いを馳せてしまいました。

が、それは同時に保護すべき子どもに依存してしまうことでもある。

特にジョイは生まれた時からルームの外を知らず育ったジャックが、普通の子どもとは違うと思われることを非常に恐れている。

彼女は友人も多く陸上の選手として心身ともに健やかに育った女性で、だからこそ日課の中に運動やストレッチを取り入れ、閉じ込められたのはまだ自分も子ども時代の終わりにあった10代後半なのに、あるものを使ってなんとか「普通の」子育てをしていて、その努力たるや本当に涙ぐましいほどでした。

だからこそテレビに出てインタビューを受けた時に「子どもにとってもっといい選択をあなたは出来たのでは?」とまるで責めるような言葉を投げかけられ相当なショックを受けて自殺未遂をしてしまう。

多分ずっとずっと自分自身に問いかけて罪悪感に苛まれていたことなんだろうなと。

それを改めて世間の総意のように投げつけられることの残酷さにお腹が痛くなりました。

 

リアルだなあと思ったのは、ジョイの実父がジャックを正視することができず、ジョイを傷つけてしまうシーン。

実父にとってジャックは自分の一人娘を「傷物」にした男の、娘への陵辱の結果で、だからこそ向き合うことができなかった。

身体感覚というか、血がつながっているからこそできないこともある。

だけど、ジョイの母親のパートナーは、ジャックを悲惨な事件の被害者、保護すべきただの子どもとして非常に温かく受け入れていく。

血縁ではない、他人同士でも寄り添い合って家族として生きていくことができるのは希望があってよかった。

 

 ジョイが自殺未遂後入院してジャックは祖母の家で生活することになります。

最初はジョイを通じてしか外界と接触できなかったジャックは、この頃にはもう一般的な子どもと同じように外で遊び、友達ができ、周りの人とコミュニケーションができる。

ジャックは離れた母親のために、それまで伸ばしっぱなしだった髪の毛を切る決意をして、祖母がその髪にはさみをいれるんですが、その時にジャックが「おばあちゃん、愛してるよ」とつぶやくんですね。もう書いてて私今涙出てくるんだけど。

祖母は一瞬手を止め、それから涙をこらえながら「私も愛してる」と答える。

ジャックにとっては世界は狭い「ルーム」の中、人は母一人、祖父には拒絶されたその子はそれでも母以外の人への愛を告げることが出来る強さを持つまでに成長してる。

子どもを持つこと、その成長を見守れることは本当に奇跡のように貴重で素晴らしいことだなと思いました。

 

ただちょっと気になったのは、ジョイの家庭がそこそこ裕福な白人家庭だったこと。

彼女は外に出て以来、回復するまで広い家の中でいい環境で割りとゆっくりと生活することができるんですが、それも経済力があってこそだよなーと思ったし、そもそもあんんな過酷な状態に置かれながらも精一杯健やかに生活することができたのは、監禁されるまでの生活が恵まれていたからで…と思うと複雑な気持ちになりました。