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bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

「海底の君へ」を見て唖然とする

テレビ

昨日2月20日に、いじめ被害者への取材をもとにして制作されたドラマ、「海底の君へ」を見ました。

www4.nhk.or.jp

2月19日のあさイチに藤原竜也が番組PRのために出演して、放送を知り、私は彼のファンなので楽しみに見たのですが、これがあんまりな内容で衝撃を受けてしまいました。

 

ドラマの内容をざっとまとめると、

主人公茂雄は中学時代の酷いいじめが原因で引きこもり、もうすぐ30歳になる今でもフラッシュバックでパニック症状になったり体調が安定しなかったりといじめの後遺症を引きずって心身ともにボロボロでもなんとか生きている。彼が引きこもったせいで母親は家を出て、父と妹で工場を間借りし、楽ではない生活を送っている。バイトはしているが長続きはせず、勤め先を転々としている。

茂雄はある日バイト先のコンビニで万引き犯の少年瞬と出会う。茂雄は少年が誰かに命令されて万引きしたのではと店長に進言するが、店長は冷たくそれを取り合わない。

少年を引き取りに来た姉の真帆もまた母親との軋轢があった。

茂雄は中学校の同窓会の招待状を受け取り、幹事の元いじめ加害者立花に会いに行くが、彼は弁護士になっており、過去のいじめのことを笑って流そうとする。

ショックを受けた茂雄は体調を崩し、バイトも解雇される。

瞬が受けるいじめもひどくなり、ついには飛び降り自殺をしてしまう。一命は取り留めたものの、瞬は意識不明の重症。被害者だけがいつまでもつらい思いを引き摺らなければならないことに絶望した茂雄は、いじめを無くすためにはどうすればいいかを考え始める。

同窓会の日、茂雄は爆弾を服の中に仕込み同窓会に出席。その様子をネットで中継して、いじめ加害者たち、傍観者達を巻き込んで自爆して死のうとするが、駆けつけた真帆に止められて警察に逮捕される。

茂雄は自爆テロ犯としてネットや世間から責められ、嘲笑され、5年の実刑を受ける。

5年後、刑務所から出所した茂雄は迎えに来た妹と真帆に、「生きていかなければ」と語りかける。

 

 

という何の救いも希望もないドラマです。最後に何かあるのではないかと見守っていた私は愕然としました。

このドラマが発しているメッセージは何か。

被害者はただ気の持ちようを変えて加害者を許して生きて行きなさい、というだけ。

今現在いじめを受けている者にさえ、仕返しやまともな報復なんて考えるな、という脅迫であり、社会はお前を助けないという絶望です。

先日NHKで放送された子育て特集番組と同じく、辛くて助けを求める人がいるのはわかるが、それでも助けを求めずに分相応に周りに迷惑をかけずに自分一人でやっていけということ。

被害者はどんなに辛くても社会に助けを求めず、公的な支援も受けず、弱者は弱者らしく迷惑をかけず弁えて底辺を這って生きていけ。加害者に仕返しをしようとすれば社会的制裁があり、犯罪者になる。そうなったら徹底的に叩き潰されておしまいだ。

一方加害者は被害者のことなど知らず、何も変わらず何もせずに楽しく生きていける。

日本は確かに被害者や弱者に冷たい、冷たいどころか弱ってる人を見ればみんなでよってたかって叩き潰す恥知らずな社会です。

しかしエンタメとしてドラマにするなら、現実をそのまま描写して追認することに意味があるとは思いません。

 心に深い傷を負った男女が懸命に生きようともがく姿が深い感動を呼ぶ!

とサイトにはありますが、誰にとっての感動でしょう?

現実はこんなもんだよとうそぶいてみせる冷笑主義者や、被害者はこうやって尊厳も何もなく這いつくばって生きていればそれでいいと嘲笑する加害者目線の人たちですか?

 

NHKが制作するのならば、例えば家族がお互いを泣きながら責めるくらい主人公の家庭が困窮しているなら、障害年金や生活保護を受給するような描写を入れる。

主人公がいじめの後遺症で困っているのならば、そういう支援団体を紹介する。

そして中学生がいじめられているのならば、怪我をした診断書をとるなど証拠を集めて学校や警察に被害を訴える、などなど主人公たちが外部に助けを求め、支援の手が届くという描写をなぜ入れなかったのか。

貧困と疾患で孤立し、追い込まれついには犯罪を犯すような描写に何の意味があったのか。エンタメとして成立させたいなら、復讐はきっちりと遂行させなければならなかったはずです。

社会問題としても被害者を馬鹿にしきっているし、エンタメとしても何のカタルシスもなく、弱者がどれだけ訴えても社会は変わらず続いていくという、ある意味今のNHKを象徴しているように、ただただ権力者や加害者におもねった内容で唖然としました。

それにあれだけのいじめの後遺症を持ち、普通の社会にいても心身ともに状態の悪い主人公が決して環境がよくはない刑務所で5年もすごさなければならないとしたら、それは命に関わってくるのではないでしょうか。

 

せめてドラマにするのならば、社会は弱者を見放さない、いじめをなくそうと活動している人もいる、世間に訴えかければ変えていける、と描くのがNHKがすべきことなのではないでしょうか。

 

これを見ていて私は映画によって世論を動かし、新しく法律まで制定された韓国の「トガニ」の事を思わずにはいられませんでした。

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エンタメができること、フィクションだからこそできることを信じ、世に問い、社会を動かそうとするような高い志はもう日本の制作陣に期待してはいけないのでしょうか。

本当に本当にがっかりしたし怒りを覚えました。