bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

マッドマックス コミック&アート集 3

 続き。

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 アンガラードは望まない相手に望まない性行為を強いられ、望まない妊娠をします。

劇中世界のように文明の衰退した世界で妊娠をするのは、女性にとっては命を脅かす危険であり恐怖です。ましてや胎児の父親は愛して望んだ男ではなく、自分たちを再生産の機械くらいにしか思っておらずおもちゃのように扱う悪魔のような相手。

映画の中でもアンガラードがウォーリグから退場した後、他のワイブスによって餡がラードが言っていたこととして「弾丸は死の種、植えられたら死ぬ」という印象的な言葉が出てきました。

一般的には幸せの象徴愛の結果として見られている妊娠も、彼女たちにとっては忌まわしく不吉で恐怖することでしかない。

 

 

妊娠を告げられたアンガラードは自分には耐えられないと絶望する。

ケイパブルはアンガラードをいたわりながらフュリオサを睨みつける。

「私たちは単なる所有物。子宮に足がついてるだけ。で、あんたはどっちにつくの?」

映画ではニュークスと強い関係を築いていたケイパブルは、コミックスでは体制側に入るフュリオサに厳しい目を向ける。

フュリオサは感情を見せず冷淡に彼女らを監視するだけ。

 

打ちひしがれたアンガラードはワイブスたちの輪から離れる。

他の4人はミスギディの指導のもと歌を歌っている。

ここで彼女らが歌っているのは、現存する最古の歌です。

wired.jp

生きている間は、輝け
何があっても、悲嘆に暮れるな
人生はつかの間であり
時はいつか終わりを求めてくるのだから

コミックスではラテン語バージョン?だと思うのですが、彼女らの部屋には楽器もある。

(ちなみに彼女らがラテン語で歌うのを聞いているジョーは、ギディから意味を解説してもらってます)

彼女らはミスギディの教育のおかげで字を読み書きができ、歌も歌えて楽器も出来る。

男の求めに応じて知的な会話もできる高級娼婦みたいな感じですね。

映画の中でも戦場で士気を高揚させ、戦術を知らせる激しい音楽が高らかに鳴り響いていましたが、彼女らの音楽は5人が一緒に歌うため、そしてジョーの慰安をするためのものでした。

ギディは他の妻たちは絶望にくれるアンガラードが輪から外れてもそっとしておくが、一番年少のチードが「これじゃだめ」といってアンガラードの元に行き、「駄目なのよ、あんたと一緒に歌うんじゃなきゃ、アンガラード」と語りかける。

 

メイキング本ではダグを演じたアビー・リー・カーショウへのインタビューで彼女らがワイブスをどう演じたかが明かされてました。

メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロ-ド

メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロ-ド

 

 5人の女優は撮影に先立ち、議論やダンスのセッションなどがある、3週間のワークショップを行ったそうです。

ジョージ・ミラーは一つの部屋で身を寄せあって暮らしていたワイブスは「頭が5つのハイドラ」みたいに動くべきと言ったそうで、動き方やしゃべり方も似せていったそうです。一つの家族、姉妹のように育ち、一人かけるのも嫌がっていたチードはじめ他のワイブスがどれだけアンガラードの不在を悲しんだか、シタデルに戻ろうとして地面にひざまずいたチードの「アンガラード」という絶叫が…胸に迫ります。

 

そして他のワイブスが眠りについた後、アンガラードは一人だけ起きてろうそくに火を灯し、本を読み漁り知識を得て、自分で堕胎しようとする。

フュリオサが機敏にそれを察知し、すんでのところで止めるが、異常を察して起き出してきたワイブスも交えた大口論になる。

アンガラードの絶望を知るワイブスは堕胎を止めたフュリオサを非難し、フュリオサもワイブスを罵倒する。

その後フュリオサとワイブスの間に会話のないまま数週間がすぎる。

それを終わらせるのがアンガラードからフュリオサへの

「あんたも昔はわたしたちと同じだったんでしょう?」という問いかけです。

「あいつの妻だったんでしょ。何があったの?」という問にフュリオサは答えませんが、続けてアンガラードは「子どもは産む」とフュリオサに言う。そこで初めてフュリオサは口を開くんですよ、「よかった(GOOD)」と。

 

それまでのワイブスに対するフュリオサの態度は感情をあまり表に出さず、無表情で冷淡、監視はしているけどほとんど言葉もかわさず無関心にも見えますが、このアンガラードとの衝突で変わる。

というか堕胎に関しては本当に取り乱して止めようとするんですよね。

それは自分のボスであるジョーが待望している世継ぎを守るため、彼女の任務ゆえという考え方もできる。

フュリオサのバックグラウンドは誇り高い戦士である鉄馬の女たち出身です。

幼いころに攫われ、20年たっても故郷の場所を覚えており、仲間への名乗りの挙げ方も覚えていた。その誇りとアイデンティティは20年間のシタデルでの過酷な生活を支える強い礎となったはず。

そしてもう一つのバックグランドは彼女もまたワイブスであったらしいこと。そして手酷いやりかたでジョーに捨てられ、右腕を失ったこと。

どうしてワイブスでなくなったか、片腕を失った理由はなにかははっきりと説明されていはいませんが、自ら堕胎しようとしたアンガラードを必死で止めたフュリオサを見ると、もしかしたらフュリオサも過去同じようなことを自分でしたのかもしれない。

赤ん坊を産めば子は取り上げられ、限界まで太らされミルク生産機にされてしまうことを恐れて自ら堕胎し、それが元でジョーの怒りをかって右腕を失ったのかもしれない。

(そんなことをされたらジョーなら殺してしまいそうな気がしますが)

 

子どもを産むと決断したアンガラードにフュリオサが言った「GOOD」は、ボスの宝物は守られたという職務上の言葉かもしれない。

でも同時にそうじゃない、一人の人間としてのフュリオサの言葉でもある。あってほしいというのは私の願望ですが。

 

ということで長くなったのでまた次回。