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bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

マッドマックス コミック&アート集 2

 続き。

bloody.hatenablog.com

 フュリオサの物語は、ワイブスの物語でも有ります。

彼女らは外の世界とはまるで違った、綺麗な空気や緑があり、体を洗える豊富な水があり、知識を学べる本や楽器など文化的なものがある部屋に、ミスギディと一緒に監禁されている。

紙のない世界で後世の人々に起こった出来事を伝えるために肌に文章を刻んだヒストリーピープルの一人であり、知識を司るミスギディはワイブスの精神を病と鬱から守るためにジョーが彼女らに与えたモノですが、彼女らの精神を守ったギディの知識や優しさこそがジョーから逃れる原動力になる。こんな生活は自分にはふさわしくないという不満に火を灯す。正しい知識こそが現状のいびつさを認識できる力になり、それを変えようとする原動力になる。

ビヨンセも新曲で ladies, now let's get in formationと歌ってましたね。

youtu.be

(この歌もビデオも彼女のエンパワメントに涙が禁じ得ないんですが、それは他の方に任せます!)

 

さて物語はアンガラードがドクから診察を受けているところから始まります。

まだ幼いチードを除いた4人は排卵をしているので性交をして妊娠させろと言われてる。そこにリクタスがやってきて俺も女がほしい、赤ん坊がほしいと暴れ、それを見たジョーがワイブスが自分以外の男に妊娠させられないようにするための護衛としてフュリオサを派遣する。

最初は自分たちとは全く違うフュリオサに対してワイブスは困惑と不安を抱く。

女?守ってくれる?誰から?ジョーから?ここに閉じ込める?あの女から誰が守ってくれるの?とひそひそと話し合う。自分たちと異質の女を見て恐れるんですね。

ジョーと床を共にするための準備もフュリオサはじっと見つめる。

娘達を風呂に入れてやりながらミスギディはこう言い聞かせる。

「あいつに何を強いられても恥じてはいけないよ。息を深く吸って心の奥底に潜り込みなさい。そこにはあいつの手も届かない」

生きるためには陵辱を耐えなければならない娘達に対して、ギディはあくまで人間の尊厳を守れと説く。あなたたちの素晴らしい美しい内面まで、ジョーの汚い手は届かない決して汚れないと言い聞かせる。

マッドマックス 怒りのデス・ロード(GRAFFICA NOVELS): COMICS & INSPIRED ARTISTS

マッドマックス 怒りのデス・ロード(GRAFFICA NOVELS): COMICS & INSPIRED ARTISTS

 

 

ジョージ・ミラーが性暴力の被害者であるワイブスを演じる女優のために、性暴力被害者のための活動もしているフェミニストの劇作家、イヴ・エンスラーをコンサルタントとして招いたという話も有名になりました。

news.aol.jp

リサーチの一環として、アフリカのコンゴでレイプ問題に苦しむ女性たちのための活動をした経験がある、フェミニストの劇作家イブ・エンスラーとも時間を過ごしたそうだ。

だからこのワイブスやミスギディの描き方は、どちらかといえば加害者側に立つ人の頭のなかで作り上げた空想上のリアリティのないキャラクター(例えばレイプされているうちに簡単に相手を好きになるような。生き延びるためにそうやって思い込むことはあるかもしれないけど、それは言語を絶する苦痛と葛藤を伴うはずなのにそこはさっぱり描かれないような)ではない。

ちょっと言葉をなくしてしまうほどに血の通ったものです。

ヴァギナ・モノローグ

ヴァギナ・モノローグ

 

 

そして死ぬほど嫌なその苦行を冷淡に見つめている、同じ女性のフュリオサがいる。

フュリオサはワイブスを見つめていて、ワイブスはそんなフュリオサを憎む。

私達を守るためにいるはずなのに、あの女は一番私達を傷つけるジョーからは守ってくれない、と。

 

ケイパブルはフュリオサに「あんたもあいつらと同じ。違いはタマがないってだけ」と憎々しげに吐き捨てる。

決定的なワイブスとフュリオサの対立は、妊娠を告げられたアンガラードがそれに耐え切れず、自ら堕胎しようとした時。

フュリオサはそれまでの冷淡な態度を捨てて、ほとんど取り乱すようにアンガラードを止め、「お前たちは甘えている、未来や希望、人に与えられる全てを手にしてるのに!」と激しく感情をぶつける。

アンガラードに「あんたにはわからないでしょう、戦争や人殺ししか知らないあなたに!」と叫ばれてフュリオサも「じゃあお前がしていたのは?」と問い返す。

生きるために人を殺してきたフュリオサと、自分のために胎児を殺そうとしたアンガラードはお互いを傷つける刃のような言葉で向き合う。

とはいえ、本来ならいがみ合う必要のない二人なんですよ。

ジョーからの性暴力で妊娠してしまったから苦悩の末堕胎しようとしたアンガラード、生きるために戦士になってジョーのために戦って人を殺してきたフュリオサ。

ジョーさえいなければ、彼女たちは自分の手を血で汚すこともなかったし、二人は対立する必要が無い。

 

このワイブスとフュリオサの対立って本当に現実を象徴的しているようで、ワイブス=自分の自由と引き換えに衣食住を満たされる生活を手に入れる、一人の男に女としてセックスと跡継ぎを提供することで他の男から守られることを選んだ女性と見ることもできるし、概念としての専業主婦と見ることも出来る。

対するフュリオサは女性としての自分を捨て、男のような身なりで男のように闘い、男として男と張り合い、男の中で勝ち残り成り上がってきた女性です。古いタイプのキャリアウーマンと見てもいいかもしれない。

 

 フュリオサにはワイブスが贅沢な暮らしをしていて、それを手放す勇気もないくせに不平不満ばかりで甘えているように見えるし、ワイブスにはフュリオサが男を恐れずに済む強さがあるくせに男側にたって私達を抑圧しようとしてくる男の手先に見える。

両者がジョーの庇護の元で暮らしている限り、あのシステムのなかで生きてる限りは、彼女らはそうやってお互いを憎んで暮らしていかなければならない。

じゃあ傷つけ合わないためにはどうすればいいのか。

男たちから生命や身体、尊厳や生活を取り戻さなければならない。

そのために、両者で協力してシステムをぶっ壊さなきゃならない。

彼女らを抑圧し分断し対立させる家父長制を壊してしまえばいい。

 

のですけど、この物語ではシステムから逃げ出すことを選ぶ。

壊すためにはニュークスやマックス、鉄馬の女たちの助けが必要になるのですが、それはまた次回!!

そしてこちらが映画を見ながらしたツイート↓ツリーになってるよ!