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bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

PBSニュースアワーを見て

BS1でアメリカの放送局PBSのニュースアワーという番組が放送されています。

昨日の放送が非常に示唆に富んでいたので、メモしました。

www.pbs.org

アメリカで高まっているテロの脅威論と反イスラム感情について、研究者、大学教授、ジャーナリストの3人の識者にインタビューしたものです。

 

 
カリフォルニア州の銃乱射事件とそれに続く激しい政治論争を受けて多くの報道機関がアメリカ国内のテロやイスラム教徒への反感、恐怖や嫌悪への国民の対応などを論じてきた。
対立や軋轢、偏見を招く発言、あるいはそれがもたらしうる危険をふまえた上で我々は実際に恐怖や不安があることも認識している。しかし一線はどこに引くべきなのか。3人のゲストに話を伺う。
 
――論争の活発化の原因は?
ロン・ブランスティン
(アトランティック紙及びナショナルジャーナル紙の記者 政治の人口統計が専門)
「3つの際だった流れが一つに集まり、今の激しい論争につながっている。
パリ同時テロ以前からアメリカのアイデンティティーに関する激しい議論があった。
その背景には2つの要素がある。
まず、経済的な緊張、この15年間ずっと平均収入が2000年を下回っている。アメリカ史上前例のない停滞期。
第二に、人口構成が20世紀以降最も劇的に変化している。
公立学校の生徒の大半は白人ではない。白人のキリスト教徒が初めて人口の半分を切った。
大統領戦はまだ初期の段階だが、白人のアメリカ人にとり、特にブルーカラー、中高年、非郊外の住民、宗教保守派の白人にとって今のこの変化が好ましいものか、というのが大きな争点の一つになっている。
それに加えてテロの脅威だ。まずパリで、そしてアメリカのサンバーナディノでもテロが起きた。
この3つの要素により議論が沸騰している。」
 
――ブランスティンさんの語った要素のうち、何が最も正当で、何が正当でないのでしょうか。
ダリア・モガヘド( 社会生活と理解の研究所 研究主任『誰がイスラムを代弁するのか』の共同著者)
「全てのアメリカ人は自分の身の安全について懸念を抱いている。
乱射やテロに対する懸念。我々はみな暴力に対する深い懸念を抱いている。
それは正当な感情。どうすれば一番身を守れるかについてみんなで話し合う必要がある。
正当ではなく、むしろ非常に危険なのはその恐怖を一つのコミュニティー全体に向けてしまうこと。
イスラム教徒を一つの固まりと見て、個人の犯罪をそのグループ全体の罪とみなすことだ。
それが危険なのはそれが非生産的であるからだけではなく、それこそが過激派組織ISISが望んでいることだからだ。
それではISの術中に陥ってしまうことになる。
彼らはイスラム対それ以外全ての戦いを望んでいる。
同じ考え方をしてしまうと、彼らが作り上げる物語をさらに強化することになる」
 
――アメリカでは中国人や日本人が悪者扱いされた過去がある。こういうことは前にもあった。
アーレド・バイドゥーン (オーランド バリー大学法科大学院の法学準教授
人種・宗教・安全保障の歴史との相関関係を研究)
「特定のグループをスケープゴートにしてしまうことはアメリカで過去にもあった。
第二次世界大戦当時の日系人収容などはまさにその例。
一定の民族やその特質を国家安全保障に対する脅威と結びつける考え方はアメリカ人の考え方に以前からあったものだ。
中国人移民排斥法もその一つだった。
イスラム教徒の入国を禁止するというトランプ氏の提案が決して新しいものではないことを示す前例はこの他にも三つある。
まず1790年から1952年の帰化法だ。
これはイスラム教徒移民の帰化、市民権取得を禁じていた。
イスラム教徒は白人と調和できないと見なされていたからだ。白人と調和することは市民権取得の必須条件だった。
第二は1924年の出身国法(National Origins Act)。
1965年まで存在した法律でイスラム教徒が多数を占めるアジアの国からの移民に厳しい割り当てをもうけている。
第三が土着のイスラム教徒、奴隷にされたイスラム教徒が大量に殺害された事件。南北戦争前の南部に120万人がいた。
このようにイスラム教徒をアメリカに入れないという考え方は、その他の民族が悪者にされたケースと同じく昔からある。」
 
――政治的観点から見ると、世論調査などが示している通り、こうした嫌悪には理由がある。両政党、及びその支持者はそれぞれ違った見方をしている。
ブランスティン
「政党により大きな違いが見られる。まず移民はアメリカ社会にとって重荷かメリットかという議論。大半のアメリカ人はメリットだと思っている
が、共和党支持者、特に大学を卒業していない人の大半は重荷と見ている。
次にイスラム教はアメリカの価値観と相容れないか。
これは多くの与論町さで半数以上の人が相容れないと答えており、特に共和党支持者にその傾向が顕著に見られる。
民主党は社会の変化を肯定的にとらえている。
民主党は若者、少数派、リベラル派、白人富裕層を支持基盤としており、今起きている文化や人口構成の変化を肯定的に見る傾向がある。
一方共和党は古きよき時代への回帰を志向している。
アメリカ社会の大きな変化を不安に思っている人たちが支持層だ。
その不安感が社会の安全とテロの脅威という懸念と結びつき、大きく増幅された。
この数週間でドナルド・トランプ氏への支持率が再び盛り返したのもそのためだと言える。」
 
――この数字を見て、また民主・共和の断絶を見て、このような状況は必然だったと思われるか?
モガヘド
「数字の動きを見ると興味深いことがわかる。
イスラム教やイスラム教徒に対するアメリカ人の感情を歴史的に見ると、反イスラム感情が急激に強まるのはテロの後だと予想していたが、実はそうではなく、選挙戦のさなかとイラク戦争までの時期だった。
つまり反イスラム感情は、特に共和党が票興しのために利用する政治ツール。
それはイスラム教徒にとって危険であるだけでなく、我々の民主主義にとってもマイナスだ」
 
――選挙がなければ反イスラム感情は存在しない?
モガヘド
「もちろん存在はしている。問題なのは、それがいつ急激に増えるかだ。
反イスラム感情は9.11同時多発テロの後増えてはいない。9.11の前後ではほとんど変わっていない。
ボストンマラソン爆破テロの前後でも実は変わってはいなかった。
しかし選挙戦の間は共和党支持者の間で15ポイントも増えている。
つまり、反イスラム感情、少なくとも反イスラム感情の増加は政治キャンペーンによってもたらされたもの。
恐怖をあおり、その恐怖を票に結びつけようとする人為的な動きによってもたらされたと私には思える。
問題は、そんなことが起こると勝者はおらず、我々すべてが敗者になってしまうことだ。
まず最も反イスラムを煽った共和党の候補者二人は結局それぞれの予備選挙で敗れている。作戦は失敗だった。
ただ彼らがまき散らした反イスラム感情や恐怖は我々の自由を蝕んでしまう。
市民が政府を批評する能力が衰え、政府の責任を問う力も弱くなる。
我々は権威主義や権力への服従、偏見や先入観をより受け入れやすくなる。
それは民主主義を蝕むものだ。」
 
――ヘイトスピーチ(憎悪の発言)とフィアスピーチ(恐怖の発言)を分けるものは何か。
バイドゥーン
「その二つはお互いを助長し合う。
我々はイスラム嫌いについて考えることに多くの時間を費やすあまり、その原因についてあまり考えていないのではないか。
原因とは、イスラムに対する無知と誤解だ。
その二つをなくすことができれば、危機の時に反イスラム感情が急激に上昇することはない。
民主党共和党両方の間でもイスラム教の現状に関する無知が広がっている。
例えばイスラム教はよそから入ってくる外国の信仰だと思われているが、アメリカで最も多いイスラム教グループは黒人で3分の1を占めている。
本気でイスラム嫌いを是正しよう、克服していこうと思うのなら、イスラム教とイスラム教徒に対する無知誤解をなくしていくことが大事。
無知や誤解がヘイトスピーチを助長し、すべてのイスラム教徒の市民的自由を侵害する」
 
――他のグループが持つ政治的な影響力をもたない、ということになると現実的にどうやって政治力を持つのか、ということになるが
ブランスティン
「アメリカは今急激に変化する社会への対応に苦慮している。文化、人口構成、経済の三つの分野での大きな変化だ。
多くの有権者が経済的に困窮し、不安を抱える中、テロの脅威が身近なものとして浮上した。
オバマ大統領は先日の演説で国民に2つのメッセージを伝えた。
我々は特定の集団をひとくくりにして議論を単純化しようとする動きと戦わなければならない。
一方でアメリカのイスラム教社会はサンバーナディノのテロ事件につながる
ような行動に目を光らせ根絶する努力をしなければならない、というものだった。
今非常に危うい状況にあるということを皆が認識することが大事。今回の事件を受けて状況はさらに難しくなっている。」