bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

「消された一家」を読んだ

ヘビーな読書が続きますが、今回は以前取り上げた尼崎連続変死事件が起こった時に多くの人が連想したであろう北九州連続監禁殺人事件を取材したルポ本です。

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

 

 この事件には主犯の男(Aとします)とその内縁の妻(同じくB)がいて、事件発覚のきっかけとなった少女の父親、そしてBの家族6人が次々と殺されました。

 

異様といえばすべてが異様に思えるほどショッキングな事件なのですが、それでも特異だったのはこの複数の殺人において主犯のAは自ら手を下すこともなく直接的な指示もしなかった。

なぜ内縁の妻や家族を「もう殺すしかない」としか考えられないほど追い詰めていったのか。

 

本書にはそれが描かれているのですが、読んでいてもやっぱり理解の範囲を超えているというか不可解なんですよね。

だから文字では伝わらないカリスマや魅力、魔力のような話術や場の空気をコントロールする技術が高かったんだろうなと思います。

女性に性的に異常に執着していた主犯に対し検察が最終兵器として投入した若手美人検察官に対して語った供述が非常に興味深い。

「私はこれまでに起こったことは全て、他人のせいにしてきました。私自身は手を下さないのです。なぜなら、決断をすると責任を取らされます。仮に計画がうまくいっても、成功というのは長続きするものではありません。私の人生のポリシーに『自分が責任をとらされる』というのはないのです(後略)」

 Aは目立ちたがり屋でワンマンタイプ、取り巻きを作り悪さをさせるのが得意。

父親から譲り受け経営していた会社でも社員を虐待したり監禁したりしてかなりあくどい商売をやっていたようです。

 

また、主犯は異様に女性に執着するタイプで結婚している時から10人くらいの愛人がいたそうですが、ほとんど全員が彼から暴力を受けていました。

当時のAの妻はバッドで殴られ腹に膝蹴りを受けて内臓を損傷し、病院にかかったことで医師が警察に通報、警察がAに任意同行を求めたことをきっかけにAから逃げることができました。

しかしAが逮捕されることはなく数時間で釈放されたそうです。

 

幸い彼女は警察に逃げ込みDVの被害申告をして適切な援助を受けてAと離婚できましたが、この時に逮捕されていたらその後の事件はおきなかったかもしれないと思うと「無い」ことにされてきた家庭内暴力の弊害について苦々しく考えてしまいます。

旧家の真面目なお嬢様だったBがAと付き合ったことに寄って悪い方に変化し、数々のトラブルを起こしていた時も、背後にはAがいること、彼女がAから暴力を受けていることは割と周囲でも知られていたようです。

 

この事件が起きた当時のDVへの認知や理解度は低く(今でもそうかもしれません)暴力で主犯Aに長年服従支配されてきたBにも一審ではAと同じく死刑判決がくだりました。

最高裁ではBの長年の暴力被害による深刻な被害と、死体のないこの事件においてBの自白が捜査を進展させたのも評価されAには死刑、Bは無期懲役が確定しました。

暴力を受け続け、服従させられ続けると倫理観は壊れてしまうこと、恐怖で支配されるとこんなに異様でショッキングな行動をとってしまうというのは本当に衝撃的でした。

 

とはいえ、もっと早く、殺人が起こる前、女性へ暴力をふるった時点で警察がきちんと介入していれば結果はまた変わっていたのだろうかと思わずにはいられません。