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bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

「ブラックボックス」読んだ

読書

カット野菜って使いますか?

コンビニやスーパーなどで売ってる透明のプラスチック容器に入っているサラダや、ポリ袋に入ってるキャベツの千切り、もしくはカレーや鍋用に数種類の野菜を下処理してカットして売っているセット野菜。

この物語は、都会で華やかに暮らしていた主人公が一転トラブルに巻き込まれ職も名誉も失い田舎に帰り、外国人労働者が多いおかげで地元の顔見知りと合う可能性も少ないからと、カットされた野菜をパック詰にする工場でパートとして深夜勤務するところから始まります。

ブラックボックス

ブラックボックス

 

 主人公は語学もできて、一流企業に務めていたキャリアもあるのに、田舎での職探しは難航する。

何もない地方で30過ぎた独身女性がどれだけ行き場がないか、息苦しく生きなければならないかがリアルに描かれていて思わずお腹が痛くなりました。

また、この職場では言葉もおぼつかない外国人の研修生が多いせいで職場環境は悪い。

上司はセクハラをしてくる、チーフは人種差別的な叱咤をする、長時間冷蔵庫の中のような環境で休憩もなく立ったままトイレにも行けず、ベルトコンベヤに流れてくるカップにひたすら野菜を置いていく作業をしなければならない。

しかも外国人研修生は日本の労基法が適用されないので、日本人労働者より賃金も低く休日も休憩時間も少なく、過剰労働されても訴えていくところがない。

 

ある時機械のトラブルで、カットされた野菜を長持ちさせるために使われている消毒液をすすぐ作業ができていなかったことに気づいたチーフの女性が薬剤が残っているかもしれない危険な野菜を食べて被害が出たら大変だという思いからそれを内部告発しますが、それは少しの波乱は起こすものの大企業の思惑によってもみ潰され仕事も辞めて引っ越しを余儀なくされる。

その事後処理にあたった社員などは「チーフは前から情緒不安定だし更年期だったから」「前々からおかしかった」と訴えた本人に問題があると強弁し、それが事実のようになってしまう。

 

その様子を見ていた主人公は、自分は上手く立ち回らないとと肝に命じます。

が、工場で一緒に働いていた同僚の外国人女性が既婚の職員と不倫して妊娠し、その後に流産してしまいます。

それが過酷な労働環境と彼女が一日三食食べていた工場の親会社のサンドイッチやサラダに入っている添加物のせいではないかと考えた主人公は矢も盾もたまらず労基局に駆け込みますがけんもほろろに追い返される。

親会社の内部通報制度も個人情報は絶対に守るといいながら、通報した次の日には誰がチクったかは突き止められる。

 

もうね、これほんっっっっっっっっっとにあるあるなんですよ!!!

労基局も地方では何故かムラの論理で動いていて労働者を守る気はあんまりないし(それどころか「そんな訴えしたら会社にいられなくなりますよ」と軽く脅してくる)、大企業の良心にかけようと思ってもそんなものはないんですよ!!

閉鎖的な田舎の短所が全部押し集めて地方のどん詰まりの労働環境を作り上げてるんですよね!!

それどころか、そうやって行政や窓口に訴えていくと「問題ある面倒な人物」ってのがムラ内に恐ろしい速さで広まって村八分的な目に遭うという、もうサスペンスホラーですよ!!!

なので地方の共同体の中でのしがらみがあんまりない、全国的な労働組合や労働問題専門のNPOとかに相談したほうがまだ親身になって話を聞いてくれます。

 

印象的だったのが、外国人研修生が研修期間を終えて国に帰る時に開かれたさよならパーティー。

国に帰ったらしばらくは就職活動しなければならないというフィリピン人女性に、主人公は何の気なしに「あなたは日本語が上手いから教室開けばいいじゃない」と勧めるのですが、

「日本語は誰にも教えないし、帰ったら話さない」

と毅然と宣言する。

 

故郷に戻り、故郷の食べ物を食べ、故郷の陽射しを浴びれば健康に戻るだろう。そして彼女たちは、二度と日本に来たいとは思わないだろう。日本という国について、あるいは日本語を、故郷の人々に教えたいとも思わない。

 多少とも夢を抱いて日本にやってきたかもしれない若い女性たちを、労働コスト削減に血道を上げる企業と、寒くて荒涼とした地方都市の風景が、日本嫌いに育てて故国に帰している。過去の戦争がどうのこうのではない。こうしたことのすべてが、反日というよりは、嫌日の感情をせっせと紡いでいる……。

 

 

企業の論理に飲み込まれ、体を壊しかける人々。

主人公の同級生で大企業に自分の農地を収奪され機械化された工場で土のない清潔な環境で人工の太陽と空調で完璧に調整された環境で野菜を生産するようになるものの、そのあまりに非道なやり方に失望し、友人の農地を借りて循環型有機自給農業に挑戦する農家の男性。

同じく主人公の同級生で食品工場が進出してきて、給食も企業に発注するようになって以来、子どもたちに健康被害が多くでるようになったのを疑問に思い、懸命に原因を突き止めようと奮闘する栄養士の女性。

二人が主人公と共に、企業の圧力に押しつぶされそうになりながらも懸命に自分の立ち位置からできることをしっかりとやっていき、最後には希望を持って終わるところはとてもよかったのですが、これ3人が3人共強靱な精神と肉体の持ち主だったからできたことだよなぁ。。。と私としては暗い気持ちになってしまいました。。。

 

地方の女性は共働きで仕事と家事に追われて疲れ果てているせいで、野菜が安くて豊富な地方において工場生産のカット野菜を使わざるを得ないところとか、もう本当にあるあるでお腹痛くなりました。