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bloody’s diary

☆血反吐を吐きつつ書くブログ☆

「殺人犯はそこにいる」読んだ

家族喰い――尼崎連続変死事件の真相」を読んで、現代の社会問題や警察・検察などの国家権力が内包する権力の濫用が深刻だったので、同じように現実に起きた事件を追ったノンフィクションを読んでいこうと思い、今回はこちらを選びました。

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

 

 1979年から1996年にかけて栃木県足利市や群馬県太田市で5人の幼児が連れ去られ、後日遺体で発見された(うち一人はいまだに行方不明)連続誘拐殺人事件を題材にしています。

北関東連続幼女誘拐殺人事件 - Wikipedia

何よりこれが重大だったのは、足利事件とよばれる冤罪被害事件になったことです。

本には容疑者として逮捕された男性(Aとします)がなぜ容疑がかけられたかも乗っていましたが、そのあまりに杜撰な捜査に驚きました。

 

容疑がかかったのは、町の駐在所員が「家に大量のロリコンビデオを隠し持っている男がいる」と報告したことが要因でした。

A氏の家には大量の少女を扱ったアダルトビデオやポルノ雑誌があったとの報道も合ったようですが、実際にA氏の家にあったビデオは「男はつらいよ」等一般的な映画も多く、件のアダルトビデオは熟女や巨乳もので、いわゆるロリコン系のポルノは一つもなかったそうです。

著者が捜査にあたった警察の元幹部にその点を問いただしても「幼児を誘拐するくらいだからロリコンだ」と言われたそうです。

 

またA氏を事件の犯人とする捜査の決定打は当時最新の技術だったDNA鑑定でした。

ですが、導入されたばかりでもあったせいか、残された証拠とA氏の鑑定しかしておらず、今では当たり前の関係者全員、被害者の両親のDNA鑑定さえもしていませんでした。

DNA鑑定の技術も未熟で鑑定してでたデータの判別も多分に恣意的であり、結局このDNA鑑定の不備をつくことでA氏の冤罪は証明されました。

 

また著者は入念な取材で真犯人らしい人物まで特定し、警察にも情報提供をしたのですが、それをすれば他の事件、すでに死刑が執行された捜査で重大な過ちを犯したことを認めることになるため、それを取り上げることもなく再捜査を断念。

下着が見えるようなスカートを履かせられた中学生くらいの少女と一緒にいて触ったり抱きしめたりしている姿が目撃されているという真犯人は野に放たれたままです。

また、捜査を打ち切るのならせめて亡くなった子の遺品である証拠(犯人のDNAが付着しているため、民間で再鑑定されるのを防ぐため)の衣類を返して欲しいという遺族の要請さえ非常にも断っています。

しかも遺品を返さないためには、被害者の母である妻と離婚して以来行方不明になっていた被害者の父親を検察がわざわざ探しだして許可を取ったから返さないと、事件後に生まれた被害者のきょうだいたちと必死に生きてきたその母親に伝えたそうです。

 

警察や検察は大きな目的のために組織としての体面を守るとなれば、証拠を捏造改ざんし、暴力によって自白を強要してくる組織というのをまざまざとつきつけられました。

その過程はまるで「殺人の追憶」のようで、ああいうことは確かに日本でも行われていたし、もしかしたらいまだにあるのでしょう。

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A氏は逮捕された後に市民税を滞納することを恐れて「あと一回2000円残っておりました。どうかよろしくお願いします」という手紙を家族に送っていました。

そんな少額の税金を滞納することさえできない善良な市民が国家権力によって凶悪な連続殺人事件の犯人に仕立て上げられたのです。

小児性愛者でもなく、ロリコンものを愛好する趣味もなかったのにロリコンの変質者として扱われた。

また科学捜査においてさえ、データは改ざんされた。

読んでいて背筋が凍りました。

他人事ではないです。

私だって明日何らかの犯罪に関わったとして逮捕されるかもしれない。

そして食事も睡眠も与えられる長時間の暴力的な取り調べを受けたら、そこから逃れたいあまり、してもいない罪を自白してしまうかもしれない。

 

もちろん日々誠実に仕事をこなしている警察官、検察官の方が大多数であることは承知していますが、いざ保身と体面を守ることとなったら、信じられないほど卑怯で暴力的な手口を使ってくる組織であるということは忘れないでおきたいです。